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『さんま&マッキーの世界に1つだけの歌2』

さんま&マッキーの世界に1つだけの歌2』 朝日放送 9月19日(金)20:00~21:54
出演者:明石家さんま、槇原敬之、勝俣州和、木下優樹菜、クリス松村、柴田理恵、高田延彦、高畑淳子、谷村奈南、千原兄弟、チュートリアル、椿姫彩菜、西川史子、温水洋一、マリエ、本村健太郎、山本高広、Every Little Thing、甲斐バンド
【内容】
ゲストの人生を変えた一曲「世界に1つだけの歌」を再現ドラマで紹介。
●「父の本当の愛情を知った曲」木下優樹菜
今から6年前…木下は地元でも有名なヤンキー娘だった。
そんな木下にも苦手があった。
頭ごなしに怒鳴りつける父親が苦手…何より大嫌いだった。
高校生になるとすぐに父を避けるため、外でアルバイトを始めた。
しかし、初日から遅刻…。
バイト先の人「初日に2時間遅刻ってどういうことですか?」
木下「つ~か……辞めていいすか?」
こうしてバックレたバイトは数十種類。一ヶ月と続いたものは一つもなかった。
そんなぐうたらな木下に訪れた転機、それが芸能界デビューだった。
渋谷でのスカウトを期にモデルの仕事をスタート。
ただ、これもすぐに辞めるのかと思いきや…
”なんかマジ生きてるっていうか超たのしいんだけど!”
初めて自分でやりたいと思えるものを見つけた木下。
責任感も芽生え、休むどころか遅刻も無し。
”もう昔の自分じゃない”木下は充実感に浸っていた。
しかし…
父親「お前にこれが続けられるのかねぇ?どうせすぐバイトみたく辞めるんだろう?」
父だけは自分の成長を認めてくれなかった…。
だが、木下の仕事は増え続ける一方。そして一躍時の人に。
画面に映るその姿は父親の予想とは裏腹なものであった。
ところが、この後、木下にある事件が起こる。
それは今年1月(2008年1月)のこと。
久々に友人の家に泊まった翌朝、ふと時計を見ると…
この日は大事なロケがあるにも関わらず既に3時間半も遅刻。
”みんな待ってんのかな…すっげぇ怒られんだろうな…”
これは一大事…すぐに現場に向かうのかと思いきや…
”めんどくせー!芸能界辞めちゃお!”なんとここにきてバックレ癖が…。
一瞬にして芸能界からの引退を決意したのだった。
当然、現場のマネージャーから何度も着信が入る。
ふと見るとその中に一つ違ったものがあった。
父からの留守番電話だった。
マネージャーが実家に電話したのだろう…。
木下は父のいつもの怒鳴り声を想像していた。
しかし…
「お父さんだ、今どこにいるんだ?」
それは今まで聞いたことのない穏やかな父の声。
「ここまで来てまた昔のお前に戻るつもりか?もう不良の頃のダメなお前じゃないだろう?」
父は自分が変わったことをちゃんと認めてくれていた。
頑張っている自分をちゃんと見ていてくれた。
そう思った瞬間、”自分を信じてくれる父を裏切りたくない…!”木下はロケ現場へと走り出していた。
その時、彼女の中では当時よく聞いていたこの曲が流れていた。
「一人じゃないから キミが私を守るから 強くなれるもう何も恐くないヨ…
時がなだめてく痛みと共に流れてく 日の光がやさしく照らしてくれる…」(♪AI「Story」)
木下は気付いた。
思えば父がいつも自分を見守ってくれていたことに…。
この歌によって父の本当の愛情を知ったのである。
●「失った愛は二度ととり戻せないと知った曲」千原ジュニア
それは今から13年前の出来事。 
大阪で数多くのレギュラー番組を抱え、若者から爆発的人気を得ていた当時21歳の千原ジュニア。
ベタな笑いを嫌い、すべる事を一切許さないその芸風から関西のお笑い番長・別名「ジャックナイフ芸人」と呼ばれていた。
そのジャックナイフ芸人は当時のインタビューでこう答えている。
”自分を動物に例えるなら野生のトラ。牙が鋭いから、誰も檻の中には閉じ込められへん。”
まさに切れ味鋭いジャックナイフ発言を連発。
そんなジュニアは大阪で1万人ライブを成功させ、ファンの声援を後押しに早くも東京へ乗り込むことになった。
ジュニア「オレな春から東京行くんや!東京のお笑いぶち壊して来たるわ!」
彼女「ウチもついて行ったらアカン?」
目の前で微笑むこの小柄な女性こそまさにジュニアの運命の人だった。
そしてその運命はあの日から始まった。
1995年1月17日、阪神淡路大震災。
震度7の大地震が関西地方を襲った。
命こそ無事だったものの彼女の住んでいたマンションは倒壊。
彼女は着の身着のままジュニアのアパートに身を寄せることになった。
そうあの地震が二人の運命を大きく変えたのである…。
ジュニア「すぐうまくいくと思うねん、そしたら迎えにくるから」
彼女「約束な」
成功したら必ず迎えにくると約束し、ジュニアは単身東京へ向かった。
しかし、現実はそう甘くはなかった…。
東京でのレギュラー番組はすぐに終了…。
新しいオファーもなく月日は過ぎるばかり。
そんな中、彼女から電話が…。
「もしもしウチやけど…もうこれ以上待たれへん!東京で一緒に暮らすか別れるかどっちかにして」
決断を迫られたジュニア。しかしこう告げるしかなかった。
「ほな別れよか」
出会いから6年。運命の糸を自らの手で断ち切ってしまった…。
それから1年、追い討ちをかけるように唯一の活動の場であった劇場も閉鎖。
かつてのジャックナイフ芸人のプライドはズタズタに…。
そんな時、思い出すのは優しかった彼女の笑顔ばかり。
遂には孤独に耐えきれず…
「もしもし 久しぶり」
ジュニアはすがる思いで彼女に電話した。
そして…
「もう一回…やり直せへんかな?」
すると、彼女は…
「ごめん無理やねん。もうちょっと早よ言うてくれたら良かったのに…ウチなお腹にな…赤ちゃんがおるねん…ごめんな待たれへんかった…」
彼女は別の人の子供を身ごもっていた。
この時、ジュニアは始めて運命の人を失った事に気付いた。
ジュニア「どんくさ…」
その時遠い記憶の中から聞こえてきた曲。
それはいつも優しい笑顔をくれた彼女との思い出の曲だった。
「Oh My Little Girl 素敵な君だけを OH My Little Girl こんなにも愛してる…」(♪尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」)
”失った愛は二度と取り戻すことは出来ない”
ジュニアはこの曲を聞くたびに運命の人を思い出すのである…。
●「親のありがたみを教えてくれた曲」本村健太郎
今から42年前、九州は佐賀県の農家の家に生まれた本村少年。
そのずば抜けた頭の良さから神童と呼ばれ、周囲の期待通り東京大学に現役で合格。
本村は親元を離れ東京で暮らすことに。
「健太郎東京は恐かとこじゃけん気を付けんしゃい」
本村「大丈夫じゃ」
「ちゃんと食べないかんよ」
真面目一本やりの本村は持てる時間の全てを勉強に費やした。
学生がバイトするなんて以ての外。
そのため、本村の生活を支えていたのは農業を営む母からの仕送りのみであった。
そんな本村にある事件が起こる。
いつもどおり図書館で勉強をしていると…
「あれ…?財布が無くなっちょる!」
トイレにいったそのわずかな隙に財布を盗まれてしまった本村。
財布には親からの仕送り一月分・2万円が丸々入っていた。
ふと九州を出る時に母から言われた一言が頭に浮かんだ。
「東京は恐かとこじゃけん気を付けんしゃい」
”親に余計な心配かけたかなかし黙っちょこ…”
しかし母は気付いていた。
残高が0になった通帳を見て心配になり本村の下宿先に電話を掛けてきた。
「もしもし健太郎ね」
本村「何?」
「一人暮らしはどぎゃんね、ちゃんと食べてる?」
本村「うるさかね!大丈夫じゃ」
母が通帳を見て心配し電話をしてきたとは思ってもいなかった本村。
心配かけさせまいと逆に乱暴な態度をとってしまった。
そして迎えた夏休み。5ヶ月ぶりの帰省。
遠まわしに東京での生活を息子に聞く母。
「健太郎、東京はどぎゃんね」
本村「別に…」
「ちゃんと食べてるの?」
本村「…」
「健太郎…」
本村「うるさかね!」
本村は東京での出来事を話せないでいた。
ぎくしゃくした関係のまま数日が過ぎ東京へ戻る日がやって来た。
東京での生活ぶりを聞きたい母。
余計な心配をかけさせまいとする息子。
駅までの長い道のり、母の運転する車中で二人は無言のまま…。
そんな気まずい雰囲気をかき消すように本村はおもむろにラジオをつけた。
そこで流れてきた曲。
それは無言で運転を続ける母に代わり、本村に優しく問いかけた。
「元気でいるか 街には慣れたか 友達出来たか
寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る…」(♪さだまさし「案山子」)
そして母が別れ際にポツリと一言。
「気を付けんしゃい」
そしておにぎりの入った包みを一つ渡してくれた。
それ以上母は何も言わなかった。
しかし電車で包みを開けると、中にはお金の入った封筒が…。
母が忍ばせた息子への愛情。
本村はそこで気付いた。
いつも遠くから母が見守ってくれているんだと。
この曲が本村に教えてくれたこと、それは親のありがたみだった。
●「悲しすぎる失恋から立ち直らせてくれた曲」徳井義実
今から14年前、徳井は京都で浪人生活を送っていた。
当然、猛勉強に励まなければならない身分。
しかし、どうしても手につかない理由があった。
それは、当時付き合って間もない彼女のことが気になって仕方がなかったからだ。
半年前、卒業旅行に行った博多で知り合った。
年は徳井の1つ上の20歳。
人生で初めて一目ぼれした女性だった。
その仕草は妙に色っぽく、高校を卒業したばかりの徳井にとっては年の差以上に大人の女性に見えた。
時が経つにつれて頭の中は彼女のことばかり。
電話で話す二人。
徳井「じゃあまた来週博多行くから」
彼女「でも大丈夫なの?お金。無理しないでね」
徳井「平気平気」
とはいうものの浪人生の徳井はお金が無い。
勉強そっちのけで工事現場で汗を流す毎日。
彼女に会いたい気持ちを抑えることが出来なかった。
お金を貯めては博多に向かう。
大人の女性に釣り合った自分に見せるため精神的にも経済的にも精一杯の背伸びをした。
初めはとまどった大人の女性との恋。
しかし「自分が年下でも彼女を優しく包んであげればいい」
そして何より徳井は思った。
「好きという気持ちさえあれば大丈夫だ」と。
そんな幸せな日々が数年続いたある日のこと…。
その日、徳井の胸は高鳴っていた。
明日、彼女の誕生日に指輪をプレゼントすると決めていたからだ。
その時、電話が掛かってきた。
彼女「わたし」
徳井「お~どうしたん?明日楽しみやな」
彼女「ゴメン行けんくなった」
徳井「えっなんで?」
彼女「明日引っ越すと」
徳井「どういうこと?」
彼女「同棲することになったと」
徳井「はっ?」
彼女「地元で不動産屋を経営しとる人なんやけど…」
実は彼女、年上の実業家から結婚前提の交際を申し込まれていたのだ。
徳井「そんなん聞いてへんわ!オレがお前の人生守るって言うたやろ!」
彼女「どこにそげな自信があると?あんたの人生も分からんのにこの先どげんして私のこと守ってくれると?」
何も言えなかった…。
徳井はこの時初めて知った。
ただ「好き」という気持ちだけではどうしようもない大人の恋の現実を。
その夜、徳井はいつものように遅い夕食をとるために近所のラーメン店へ。
すると店内からある曲が…
それは背伸びをした恋に傷付いた徳井の胸にすっと飛び込んできた。
「信じあえる喜びも 傷つけ合う悲しみも いつかありのままに愛せるように Time goes by…」(♪Every Little Thing「Time goes by」)
この時徳井は思った。
”いつかありのままの自分で大人の女性と恋をしたい”
この歌によって徳井は悲しすぎる失恋から立ち直ることが出来たのだった。
Every Little Thing「Time goes by」スタジオライブ
●「生きる勇気を与えてくれた曲」椿姫彩菜
生まれたときは男の子、今は女子大生の椿姫彩菜。
その初エッセイである「わたし、男子校出身です。」が大ヒット。
女子高生の超人気雑誌「小悪魔ageha」のカリスマモデルとしても活躍する今話題の人気者。
しかし、その笑顔の裏には自ら死をも考えた辛く苦しい日々が隠されていた…。
今から24年前、一家の長男として生まれた椿姫は穏やかで幸せな毎日を送っていた。
しかし、同世代の女の子を見ると「いいなぁ自分もあんな服着たいなぁ」
物心がつくとある葛藤と戦うことになる。
”自分は女の子なのになんで男の子なんだろう”と。
そんな思いを椿姫は誰にも相談できず一人悩み続けていた。
なぜなら一番身近な母親にさえそれは理解されるものではなかったからだ。
「あんた…女の子の格好をして外に出るなんて一体何考えてるのよ!」
椿姫「私の自由じゃない!」
椿姫は本当の自分を認めてくれない母といつも喧嘩になった。
そして、母も決して言うことを聞かない息子に悩み、思わず…
「あんた!キモいのよ!」
まさか自分の母からそんな言葉を聞くとは…。
椿姫の心は傷付いた…。
「お母さんに何がわかるのよ!」
実は、椿姫は性同一性障害という病を持って生まれた。
性同一性障害とは心の性と体の性が一致していない病気。
当時はまだこの病がほとんど知られていなかった時代。
そのため母が椿姫のことを理解してあげられないのは無理もなかった。
そんな椿姫の唯一の心の支えになっていたのが学校の友達。
そして今でも忘れられない一つの恋だった。
(学校の手洗い場で)
椿姫「あれ?ハンカチ忘れちゃった…ねぇハンカチ貸して!」
男子「え!?」
椿姫はそのキョトンとした表情が愛くるしい男子に一目惚れ。
それ以来ますます心を奪われていった。
しかし自分からその想いを伝えることは決してなかった。
なぜなら…
「お前らデキてんの!?男同士なのに気持ち悪いなおめぇら!」
椿姫と仲良くすることをからかう生徒もいたからだ。
これ以上好きな人に嫌な想いをさせたくないとずっと告白することが出来なかったのである。
そんな中、運命の日は突然訪れた。
川原を二人で歩いている途中、彼が言った。
男子「もし俺がお前の事好きって言ったらどうする?」
椿姫「…どうしたの?」
男子「いや!冗談だよ!ごめんごめん」
彼も友達以上の感情を自分に抱いてくれている。
椿姫は生まれて初めて恋が実るかもしれない期待に胸を躍らせた。
しかし、この後その全てを打ち砕く一言を告げられることに。
男子「でもさぁ…」
椿姫「ん?」
男子「お前が本当の女だったら良かったのにな!」
椿姫「え?」
絶対聞きたくない一言だった…。
「本当の女って何?体がちょっと違うと女じゃないの?何で私だけ…」
みんなと同じような恋すら出来ない人生。
椿姫は生きる希望を見失った。
そして月日が経ち、その姿を女性に変えた椿姫。
しかし心の傷は癒えぬまま。
そんな時、ある歌と運命的に出会う。
それは椿姫と同じ、相手に告げることの出来ない切ない恋を歌ったものであった。
「手を繋ぐくらいでいい 並んで歩くくらいでいい それすら危ういから 大切な人は友達くらいでいい…」(♪中村中「友達の詩」)
この時、椿姫は思った。
”苦しんでいるのは自分一人じゃない 勇気を持って堂々と生きていこう”と。
こうして椿姫はこの曲から生きる勇気をもらったのである。
●「役者になることを決心した曲」温水洋一
宮崎県に生まれた温水。
彼の役者としての出発点は高校一年に遡る。
当時、温水が文化祭で発表した自作自演の映画「ジャン拳」。
主役はもちろん温水。当時16歳。
温水はこの映画を通じ、仲間と一つの作品を作り上げていく芝居に心を強く動かされた。
その後、愛知県の大学に進学した温水は迷うことなく演劇部に所属。
学業そっちのけでどっぷりと芝居漬けの日々が続く。
当時の温水は芝居に一切の妥協を許さない熱い演劇青年。
毎日一人部室に残り役作りに励んだ。
そんな温水を周囲はこう呼んでいた。
『芝居の鬼』
しかし、学生生活も4年になると周囲の環境は一変した。
就職活動が始まり、演劇部の仲間も次々と就職先を決め始めた。
後輩「温水先輩は就職どうするんですか?」
温水「まぁなんとかなるんじゃない」
実は温水はこう思っていた。
”俺はこのまま芝居をやり続けたい。皆で一つの作品を作り上げていきたい”
だが、それで飯が食える保障はどこにもない…田舎の両親も当然就職することを望んでいる…
芝居の鬼は悩んでいた。
「俺は一体どうすればいいんだ…」
そんなある夜…
演劇部の後輩達が卒業生に向けて送別会を開いてくれた。
どのテーブルも盛り上がるのは就職試験の話ばかり。
そんな中で就職先が決まっていないのは温水ただひとり。
仲間「温水元気か?お前どうすんだよ?就職すんのか?」
温水「自分でもどうすりゃいいのかわかんないんだよ!」
就職活動なんかやめて好きな芝居をやりたい…でも芝居で食べていく自信がない…
答えが出ぬまま夜は更けていった。
そんな中、突然1人の後輩がギター片手に歌いだした。
そして、その歌が答えの出ない温水の背中をそっとおしてくれた。
「わたしは今日まで生きてみました 時にはだれかの力をかりて
時にはだれかにしがみついて そして今わたしは思っています
明日からもこうして生きて行くだろうと…」(♪吉田拓郎「今日までそして明日から」)
温水はこの時決めた。
”飯が食えなくてもいい明日からも芝居を続けていこう”と。
この歌によって温水は役者になることを決心したのである。
●「人の命のはかなさを知った曲」西川史子
今から12年前、西川は聖マリアンナ医科大学に通う医大生だった。
父が整形外科の開業医という裕福な家庭。ミス日本にも輝いた美貌。
西川は当時本気でこう思っていた。
「私にできないことなんて何もない」
しかし、それから数年後、西川は人生の厳しさを嫌と言うほど思い知らされる。
研修医として働き出した西川を待っていたのは今まで経験したことのない過酷な生活だった。
昼夜を問わず24時間休むことのない医療現場での毎日。
当直も多く、家に帰れるのは月に数回のみ。
病院のソファーで朝を迎えることも決して珍しいことではなかった。
そんな生活の中新米の西川に仲の良い患者が出来た。
その患者は末期の大腸ガンで余命数ヶ月と診断されていた。
本人もそのことは知っていたが決してあきらめず毎日を明るく過ごしていた。
重い病気にも落ち込むことなく前向きに生きるその姿に西川は元気をもらっていた。
しかし…
ある当直の日の夜、西川は思いもよらぬ光景を目にしてしまう。
それは迫り繰る死の恐怖と必死に戦うあの患者の姿だった。
見たことのない悲愴な形相に西川は何も声を掛けることが出来なかった…。
そして、程なくしてその患者は帰らぬ人となった…。
さらに傷心の西川に追い討ちをかけるように、急患が運ばれてきては治療の甲斐もなく亡くなってしまう…。
そんな辛い日々が続く…。
あくる日もそのあくる日も。
西川は身も心も限界だった…。
その日の夜、西川は呆然と満月を眺めながらずっと同じことを考えていた。
「私には無理かもしれない…この現実から逃げ出したい」と。
そんな時、ふと西川の耳に語りかける歌が、彼女にあることを気付かせてくれた。
「何億光年輝く星にも寿命があると 教えてくれたのはあなたでした…」(♪山口百恵「さよならの向こう側」)
西川は改めて気付いた。
”輝く星に寿命があるように人の命も永遠ではないのだ”と。
夜空に広がる星と患者たちの死が重なった。
そして西川は思った。”人の命は儚い”
そんな命を預かっているからこそ力の限り患者のために尽くしていこうと。
西川はこの曲に、人の命の儚さと医者としての生き方を教えてもらったのだった。
○槇原敬之”ピンチの時に必ず救ってくれる曲”(♪ヴァネッサ・ウィリアムス「Save the best for last」)
○明石家さんま”売れない時代を支えてくれた曲”(♪甲斐バンド「最後の夜汽車」スタジオライブ)

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