『カンブリア宮殿』 テレ東(月)22:00~
公式HP:http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/bn/index.html
出演者:村上龍、小池栄子、溝畑宏
◆カンブリアFile No.129 大分FC社長 溝畑宏
●『地方弱小チーム 奇跡の快進撃』
2008年、日本のサッカー界に異変が起きた。
地方の弱小チームが優勝争いを演じたのだ。
それが大分トリニータ。
次々と強豪チームを打ち破り、一時はリーグ戦首位に躍り出た。
勢いは止まらない。11月1日、ヤマザキナビスコカップで決勝に進出。
決勝戦で名門清水エスパルスを2対0で下し初優勝。
設立わずか14年、田舎チームが日本一の座を勝ち取って見せたのだ。
トリニータの地元は人口120万に満たない九州の大分県。
しかしそのスタジアムは試合の度に2万人の観客で溢れかえる。
トリニータを運営する大分フットボールクラブ。
地元新聞社のビルに間借りしている。
社長室を覗いてみるともぬけの殻。
社長自ら営業に走り回っているという。
2007年、営業収入は22億円。J1リーグに所属する18チーム中15位だった。
多くのチームには大企業がスポンサーについている。しかし、トリニータにはいない。
そこで溝畑は別の作戦に打って出た。大きさでなく、数で勝負。
小さなスポンサーを数多く取り込もうというのだ。
強烈な個性でトリニータを率いる溝畑はそのキャラクター同様、異色の経歴を持つ。
東大卒業後、自治省に入省。1990年に大分県庁に出向した。
出向後、日韓ワールドカップ招致を目指しスタジアムの建設を計画。
その一環としてサッカーチームを誕生させる。
それが大分トリニータ(旧トリニティ)だった。
日本のサッカーは5段階のリーグで構成されている。
その頂点が日本一を争うJ1リーグ。そして一番下が都道府県リーグ。
トリニータはその一番下からのスタートだった。
生まれたばかりのトリニータには専用グラウンドもなかった。
さらにチームのデビュー戦に集まった観客はたった3人。
”観客をもっと集めたい”
溝畑は人が集まる商店街に目をつけた。
”ここで毎日、道行く人に声を掛け捲ろう”
1日100人をノルマと決めた。
その時生まれたのがド派手なパフォーマンス。今や地元の名物となっている。
溝畑の地道な努力が実を結び観客は徐々に増え始めた。
2002年には1万2000人を突破。
この年、J2で優勝し、誕生わずか8年という短期間で念願のトップリーグ、J1昇格を果たしたのだ。
2004年、溝畑は社長に就任。名実ともにチームの大黒柱となった。
しかしJ1の世界は甘くはなかった。
チームは連敗を重ね、下位に低迷。経営も悪化。
就任翌年には累積赤字が7億円を突破。
チーム存続の危機に追い込まれた。
この窮地に地元サポーターが立ち上がった。
彼らの後押しもあって大分県からトリニータに2億円の救済が決定。
溝畑が作り上げた地元との絆がチームを救った。
この経験から溝畑は官僚を辞める決断を下した。
”監督、コーチ、選手が命懸けで戦っている。そしてサポーターに必死の思いで応援してもらってる。それと同じ思いで戦うためにはまさに退路を断って命懸けで戦わないと”
絆を深めているのは溝畑だけではない。
選手たちも休日返上で地元との交流を重ねている。
地元との絆をベースにホームゲームでの観客動員数は平均1万9759人。
大都市の強豪チームを押さえ堂々の第5位に輝いた。
そして最終順位は前の年の14位から一気に躍進、見事第4位となった。
●『「絆」で売りまくれ モーレツ営業術』
溝畑の仕掛ける営業によりトリニータのスポンサーは700社を超える。
その業種も千差万別。
町の開業医に税理士、お金を貰えるならどこでも飛んでいった。
しかしこれだけ多くのスポンサーを集めながら、年間2億5千万円を稼ぎ出すユニフォームの胸に企業名がない。
それにはある訳があった。
パチンコホールなどを経営する総合レジャー企業のマルハン。
そのトップ、韓会長もトリニータを支援する一人だった。
2006年までユニフォームの胸についたマルハンのロゴ。
しかし…
溝畑「すいません、会長。Jリーグからの指示でパチンコホール企業とのユニフォームスポンサー契約は自粛せよとのことです。」
韓会長「どういうことだね溝畑社長?」
溝畑「来年からユニフォームにマルハンの文字は入れられないということです。」
社名が載らなければ支援する意味がない。溝畑はマルハンの撤退を覚悟した。
その時だった。
「ウチはそれでも支援を続けますよ、ユニフォームに社名が載らなくてもかまいません。私はあなたの熱意に惚れ込んだのです。共に日本一を目指しましょう。」
こうしてマルハンはユニフォームスポンサーからスタジアムの看板や、あまり一目につかない練習用ユニフォームに社名を載せるスペシャルスポンサーになった。
溝畑はこの思いに応えるためある決断をした。
それはユニフォームの胸に別のスポンサーをつけないことだった。
さらにサポーターは毎試合マルハンのビッグフラッグを掲げた。
人と人との絆、それが溝畑の営業だ。
●『地元への恩返し トリニータ効果』
地元のサポーターが支える大分トリニータ。
一方、チームも地元を元気にする役目を果たしている。
試合の朝、大分駅前に現れた大行列。
その先にあったのはスタジアム行きのバスだ。
ホームゲームの開催日には大分バスが平日の7倍バスを走らせる。
また町のオフィシャルショップではグッズが飛ぶように売れ、月に600万円を売り上げている。
そしてスタジアムでは大分名物だんご汁のトリニータ鍋が多い日には1200杯以上売れるという。
さらにトリニータ効果は新しいビジネスを生み出す原動力にもなっている。
会場内の警備をする会社はトリニータのためだけに設立された。
2007年、ホームゲーム開催による経済効果は約23億円。
しかしそれだけではない。
トリニータは数字では計り知れない大きな影響を地元にもたらしている。
『カンブリア宮殿』 12月29日
