『カンブリア宮殿』 テレ東(月)22:00~
公式HP:http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/
出演者:村上龍、小池栄子、鈴木敏文
◆カンブリアFile No.149 セブン&アイ ホールディングス会長 鈴木敏文
●『密着!激安スーパー誕生 流通王の挑戦』
イトーヨーカドーか窮地に陥っていた。
この春の決算は減収減益。
ヨーカドーだけではない。
スーパー業界の売り上げは90年代半ばから右肩下がり。
業界全体が地盤沈下を起こしていた。
そんな中、セブン&アイグループでは鈴木の号令のもとイトーヨーカドーの生き残りをかけた大改革が始まっていた。
それはイトーヨーカドーの不振店を「ザ・プライス」と呼ばれる激安店に変身させるプロジェクト。
消費者の低価格志向に合わせて、減った客を取り戻そうというのだ。
埼玉・東松山市「イトーヨーカドー東松山店」。
こちらは1970年代にオープンした典型的な駅前のスーパー。
かつては多くの客で賑わったが店を覗いてみると客足はまばらだ。
売り上げの方も91年以降徐々に下がり続けている。
その原因は一体何なのか…?
東松山店の近くには競合する大手スーパーが2つある。
いずれもヨーカドーより安いというのが地元の主婦たちの評判。
この店に改革のリーダー・渡辺がやってきた。
安売りが当たり前になっている今、渡辺はどういったディスカウントストアを作ろうというのか。
早速本社で価格会議が開かれた。
どこまで安くすれば客は来てくれるのか。
これまでより2~3割安いのが最低ライン。生鮮食品はさらに激安。
それを目玉にして客を呼ぼうと考えた。
渡辺にはさらなる秘策があった。
午前7時。埼玉県魚市場。
すでに競り落とされたマグロが次々と運び出されていた。
そんな競りの終わった市場にやって来たのは「ザ・プライス」の鮮魚バイヤー・坂根。
こんな時間に来るのには訳があった。
獲れすぎて競りで売れ残った魚は安値で直接取引される。
坂根はそうした魚を探しに来ていた。
工夫を凝らして安く仕入れる、これが「ザ・プライス流」。
そして迎えた「ザ・プライス」東松山店、オープン当日。
店内に客が流れ込む。
1パック74円のたまごや1本13円のキュウリが飛ぶように売れていく。
売れ行きは順調。
激安の秘密は売場にもある。
○【ザ・プライス流1 客の手を借りろ!】
キャベツの葉っぱを客が自分で捨てている。
商品の袋詰めも客自身が行っている。
こうした作業を客にやってもらうことで人件費を削減できた。
○【ザ・プライス流2 ケースごと売場へ!】
牛乳売場にも工夫がある。
棚に並べずケースのまま販売している。在庫も倉庫に置かず全て売場に。
補充がすぐ出来るので作業効率が高まった。
○【ザ・プライス流3 売れ筋を大量に置け!】
さらに、売れ筋に搾りこみ大量仕入れでコストを削減。
このボリューム感が買う気をそそる。
不振の店を激安店へ。
流通王・鈴木のヨーカドー改革は果たして吉と出るか凶と出るか。
●『不振スーパーが大変身 客のニーズをつかむ術』
東京・葛飾区金町。
寅さんで有名な柴又に近い、典型的な東京の下町だ。
この町のヨーカドーで鈴木のある実験が行われている。
1階はこれまでどおりの食品スーパー。
しかし2階に上がると、そこにはホームセンターがある。
去年11月、衣料品売場を全面改装した。
一体なぜホームセンターなのか。
鈴木「ホームセンターは日本にはたくさんあるが都心型はあまり無いので”都心型”ホームセンターを作りたいと思った」
鈴木が目指す都心型のホームセンターとは…
その答えは品揃えにあった。
コンクリートの壁にも簡単に付けられるフック、テーブルクロスの汚れを消す消しゴム、サッシの隙間を防ぐ粘着テープなど、簡単に扱えて生活を便利にする商品に的を絞った。
すると普段ホームセンターに足を運ばない主婦たちが買いに来るようになった。
イトーヨーカドーでは初めてのホームセンター。
経験者はいない。全くの手探りから始まった。
その指揮を執るのがプロジェクトリーダーの金子。
金子は店に来ると毎朝必ずやることがある。
それは客の要望書に目を通すこと。
この日、「網戸の網が灰色ばかり、青いのも置いて欲しい」という要望書があった。
売場に足を運んでみると灰色と黒だけ青がない。
家の中から外がすっきり見えるため最近はこの2色が売れ筋だ。
金子は担当者と相談し、売場に青い網も並べることにした。
売れ筋商品じゃなくても客の要望にはどんどん答える。
これが金子のやり方だ。
ニーズの掘り起こしは店の中だけではない。
町を歩くネクタイ姿の男たち。
実はホームセンターのプロジェクトメンバー。
定期的に周辺の住宅街を回って商品のヒントを探している。
彼らが足を止めた。
気になったのはプランターを引っかけるフック。
近所の人に話しを聞くと、結構ニーズがありそうだ。
店に戻った二人は早速、金子に提案。提案を受けて金子はすぐさま売場に向かった。
フック自体は売場にあったが、ただ置いてあるだけでお客にはアピールできていなかった。
早速、売場を作り変えて使い方がイメージできるディスプレイに変更。
果たしてその効果は…
数日後。ディスプレイが目を引くのか、お客が次々と足を止めて手にとっていく。
地域のニーズに合わせたイトーヨーカドーの変身。
売り上げは2割ほど伸びたという。
●『コンビニ女性店主 奮闘物語』
消費が冷え込む中、セブンイレブンの改革が始まった。
川崎の郊外にある「セブンイレブン 川崎久末店」。
100年以上続いた酒屋を6年前にやめセブンイレブンに加盟した。
エリアでも売り上げ上位に入る優良店だ。
だがオーナーの森稚香子は不安を感じていた。
タスポ効果を差し引けば売り上げは頭打ち…。
少しでもリピーターを増やすためお客に気さくに声を掛ける。
品揃えも工夫してみた。
年配客の多いこの地域。他店ではあまり置いていない野菜も置くようにした。
さらなる変化を求めて森が動き出した。
森が向かったのは近所の飲食店。
実は「ご用聞き」を始めたのだ。
配達がてら客のニーズを直に聞き取る作戦。
ただ注文を聞くだけではない。重いものを届けることでお年寄りのニーズも引き出せる。
これまでのコンビニにはなかった新たな取り組みが始まっていた。
●『村上龍の視点 日本は店が多すぎる…』
鈴木「店が多すぎるというのは今まで消費が旺盛だったことを表しています。
これからは合併したり自分で閉めたり整理されて、お客のニーズに合った店だけが残っていきます。
ただ、デパート、スーパー、コンビニがなくなることはなく、新しい専門店もこれからどんどん出てくるでしょう。
コンビニが飽和状態だと言われますが私から見ると飽和状態じゃありません。
全部の店が同質だったら飽和と言えます。しかしそれぞれの店やチェーンにはそれぞれの性格がありますから。
お客に受け入れられる店は伸びていくでしょう。」